しもきた
札幌の長期出張の合間を縫って久しぶりに東京に来た。
札幌も人が多いが、東京はそれよりもずっと多いし、みんななんとなく気取った感じがする。
東京に来た、といっても彼女に会う以外は特にやることもない。
彼女は仕事で朝早く(なんと4時半!)から出かけてしまったので、
横向きにやけに膨らんで軍艦巻きみたいになってしまった髪の毛をどうにかしよう!と思い、
千歳船橋の家から近くでできる限り安いところを探した。
どうやら下北沢は比較的安いらしい。ホットペッパービューティーで上のほうにでてきたところを予約しておいた。
下北沢。おしゃれな若者の街。
予約時間の15分ほど前に駅に着き、きょろきょろしながら店に向かう。
最近はシャツをズボンに入れるのが流行っているらしい。みんな小慣れた感じでかっこいい。
こっそり真似をしようとしたが、秋葉原を闊歩してそうな風貌になったのですぐにやめた。
服とかは何を着ればいいのかよくわからないので、関心がないということにしているが、おしゃれなシティボーイたちを見た後に、ショーウインドウに映る自分の姿を見ると、やっぱり気恥ずかしいような気分になる。
そんなこんなで「おれなんかが下北で髪を切っていいのだろうか……」と若干不安になりつつあったが、なんとか店に到着し、予約時間と名前を告げた。
なにやら店員さんがバタバタしており、おや、と思っていると
「予約が確認できるものをお持ちですか?」と聞かれた。
どうも予約していた店は隣のビルだったらしい。
ややこしいからもっと離れたところに店をつくれ、と内心思いながら店員さんに丁寧に謝って本命に向かった。
入ると今度はすんなり案内される。一安心である。
席に座って待っていると、「本日担当いたします、近藤です」と言いながら銀髪のイケイケな感じの美容師さんがやってきた。
一瞬、うげ、と思った。絶対こいつ女を殴ってるだろ。
ただ見た目で人を判断するのはよくないと思いなおし、笑顔でよろしくおねがいします、と言う。
今日はどうされますか、仕事はなにをしているんですか、と聞かれ正直SEと答えると、モテる職業じゃないすか、と言われる。
モテないっすよ、と返しながら、そんなんで喜ぶかバカ、と思う。
その後もやたらと話しを続けてくるものの、彼の自信を10としたとき、話の面白さが0.4くらいしかない。
しまいには、昔ボーイズバー?とやらで月に6,70万稼いでいた、などと。なんだこいつは。自虐話の一つもしない人間に、自慢話をする権利はない。
昨日うんこ漏らした、というようなくだらない話のあとなら聞いてやらんでもないものの、唐突な自慢話ほど癪に障るものはない。
と、ここまで批判したものの、黙ってもらえますか、などと言う勇気は母親の腹の中に置いてきてしまったので、タブレットで週刊誌を読んでいるので、少し黙っててもらえませんか?という雰囲気を醸し出すことに専念した。努力むなしく彼は最後までしゃべり続けていた。
髪の毛は可もなく不可もなく、といった感じに仕上がり少しほっとしたもののやたらと疲れた。
熊本のほうが居心地がいいや、と思う。